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Tsuneyuki Research Group


研究紹介

「次世代半導体材料SiON/SiC表面系の研究 ~Band gap変化, Schottky contact~」

SiCは約3eVという大きなバンドギャップや高い熱伝導率などの特性から、 パワーデバイスへの応用が期待される次世代半導体材料です。 しかし電界効果トランジスタ(FET)などの電子デバイスへの応用に必要な、 清浄な絶縁膜をSiC表面に形成する事が困難でした。そのような状況の中、 2007年にSiC(0001)表面にSiONという組成の絶縁性超薄膜の形成が報告されました。 SiONは厚さわずか5Å程度という薄さにもかかわらずSiO2と同程度の バンドギャップを持つ事が観測され、大きな注目を集めました。

 図:SiON/SiC(0001)の構造図(top viewとside view)。緑破線はunit cellを表しています。side viewを見たときの上部3原子層がSiON。その下がSiC基板です。(クリックすると拡大します) 我々のグループではSiON超薄膜の物性の解析を第一原理計算によって進めてきました。 まず表面の絶縁性は、局所状態密度(LDOS)を用いてSiON/SiC表面深さ方向の バンドギャップ変化の解析から理論的にも確かめられ、 その変化は軟X線発光吸収スペクトル測定による結果とも一致しました[1]。

次に注目したのが、SiONと金属界面の特性です。 FETといったデバイスは絶縁膜と金属電極を接触させた構造をもっているため、 金属/SiON界面も基礎研究として重要です。金属-半導体界面で重要な問題として Schottky接合問題が挙げらます。半導体-金属界面に生じるSchottky障壁の高さは、 理想的には金属の仕事関数と半導体の電子親和力の差で決まるとされ (この条件をSchottky limitと呼びます)、SiO2など大きなギャップをもつ イオン結合性半導体では成立する事が知られています。しかし一般には界面状態によって 金属状態のFermi levelがピンされることにより、Schottky limitは全く成り立ちません。 Schottky limitが成り立つとSchottky barrierのデザインが容易になり、 SiON表面がどちらの特性を持つかは重要な問題でした。 そこで簡単のためSiON/SiC(0001)表面系にAl sheetをのせた系とB sheetをのせた系の計算を行い、 両者のSchottky barrierの差を評価し、Al sheetとB sheetのwork functionの 計算値の差と比較したところ両者によい一致がみられました。 この結果からSiC/SiON(0001)表面系でSchottky limitが成り立つことを示す事が出来ました。

[1] T. Shirasawa, K. Hayashi, H. Yoshida, S. Mizuno, S. Tanaka, T. Muro, Y. Tamenori, Y. Harada, T. Tokushima, Y. Horikawa, E. Kobayashi, T. Kinoshita, S. Shin, Y. Ando, K. Akagi, S. Tsuneyuki, and H. Tochihara, "Atomic-layer-resolved bandgap structure of an ultrathin oxynitride-silicon film epitaxially grown on 6H-SiC(0001) ", Phys. Rev. B 79, 241301 (2009) (R).


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