研究紹介

「相変化記録材料の超短パルスレーザー照射によるアモルファス化の第一原理計算」

現在、Blu-ray Disc などの書き換え型光学ディスクは世界中に普及しており、我々の生活に深く浸透している。 これらのデバイスでは、レーザー照射による記録膜の結晶-アモルファス転移により、データの書き換えが行なわれている。それに対して近年、この記憶膜に使われている材料(相変化記録材料)の一つGe2Sb2Te5にパルス幅10-13秒程度のレーザー(超短パルスレーザー)を照射することで、融解を伴わない高速のアモルファス化が起きることが実験的に示された。 この実験はこれらのデバイスの更なる高速化の可能性を示したが、実用化のためにはさらなる理解が必要である。


そこで我々は、Ge2Sb2Te5を始めとする相変化記録材料の上述のアモルファス化のメカニズムを明らかにするため、 レーザー照射直後の状態をモデル化し、そのシミュレーションを行なった。 計算手法として有限温度密度汎関数理論に基づく第一原理計算を用いた。 その結果、レーザー照射直後に高配位構造へ変化した後、熱的緩和過程を経て、 常温で安定なアモルファスに変化するという結果が得られた。 このアモルファス化の過程は従来のモデルで主張されている低配位構造を経由するアモルファス化の過程とは大きく異なる。 一方、融解を伴わず、高配位構造を経由するという点で圧力誘起アモルファス化と類似している。 以上の結果に基づき、我々は高圧誘起アモルファス化との類似性をもった、超短パルスレーザー照射によるアモルファス化の新たなモデルの提案を行なう予定である。


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